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NIE講演会「新聞で学校が変わる」詳細掲載

先日ご案内しましたとおり、本日5月28日付け読売新聞朝刊にて、5月13日に東京本社で開催されたNIE講演会「新聞で学校が変わる」の詳細が一面を割いて掲載されました。ぜひ、多くの学校や行政の教育関係者の方々や、お子さんを持つ親御さんにご覧いただきたいと思います。今後、具体的な新聞活用の提案をさせていただきたいと思います。

朝学習で「NIEタイム」

NIE講演会「新聞で学校が変わる」

 

 「新聞で学校が変わる」をテーマにしたNIE講演会が13日、読売新聞東京本社で開かれた。次期学習指導要領の総則に新聞活用学習が盛り込まれるなか、教育現場で新聞を使うノウハウを学ぼうと、小中高校の教員や大学生ら約60人が参加した。

 前半は、日本新聞協会の関口修司NIEコーディネーターが、「学校を、地域を巻き込む新聞の力~NIEをやって何が悪い!」と題して講演。「NIEは、次期学習指導要領で導入される『主体的・対話的で深い学び』に合致する。子どもの学ぶ力の向上にもつながる」と話し、学校を挙げてNIEに取り組む利点を説いた。

 後半は、東京都北区立滝野川小学校の水木智香子教諭も加わり、パネルディスカッションが行われた。水木教諭は、朝学習の時間を使い、全児童が週に1回新聞に親しむ活動「NIEタイム」を紹介し、「NIEに取り組むことで、子どもたちだけでなく教師も変わった」と報告。関口氏は、教育委員会や地域とともに取り組むことが大切だと強調した。

地域巻き込み組織的に…基調講演 関口修司氏

 当初は一人で取り組んでいた。新聞を活用すれば子どもたちは育つという確信はあったが、卒業すると新聞から遠ざかり、元に戻ってしまう。一人でやる限界を感じ、学校や教育委員会、地域を挙げて組織的に取り組む必要性を痛感した。

 小学校では2020年度、中学校では21年度から全面実施される新しい学習指導要領では、未知の状況に対応できる力を子どもたちにつけることが求められる。そのためには、タイムリーでリアリティーのある教材が必要だ。総則には、新聞をできる限り使うようにとの趣旨が盛り込まれている。新学習指導要領の方向性をNIEで生かすには、日常化の環境づくり、学校司書の活用、複数紙の読み比べが大切だ。

 高校生の約4割はほとんど勉強せず、中高生の自己肯定感、社会参画意識が低いという現実がある。女子高生のスマートフォン平均使用時間が5・5時間に上る一方で、高校生の新聞不読率は4割を超える。小学6年生と中学2年生を対象に行われる全国学力・学習状況調査(学テ)からは、判断の根拠や理由を示しながら自分の考えを述べることが苦手だという課題が浮かび上がっている。

 新学習指導要領でうたわれた主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)は、NIEに合致する。学テでは、新聞をよく読む子ほど学力が高いという分析結果が出ている。都内の公立小学校でNIEに取り組む前後の学力を比較した調査では、学力向上との相関関係が見られた。

 NIEをさらに広げていくには様々な「壁」がある。新学習指導要領の総則に「新聞」が載ったのは、NIEにとって追い風だ。

 NIEに取り組むには、教員が一手間をかけなければならない。ただ、その一手間で二手間分、子どもたちが育つ。学級、学校、地域を巻き込み、組織的にNIEに取り組んでほしい。

 

◆NIE=Newspaper In Education(新聞活用学習)の略称。新聞を教材に使った学校や家庭での教育・学習方法。1930年代にアメリカで始まり、現在は世界70か国以上で実践されている。社会性豊かな青少年を育て、活字文化と民主主義社会の維持、発展につながるとされる。主権者教育を充実させる手法としても注目されている。

 

 東京都内のA公立小学校で、知識等を実生活の様々な場面に活用する力などを問う国語B、算数Bの結果を、全国平均と比較した。元々、全国平均より点数が高い小学校だったが、NIEを本格導入した2014年度以降、全国平均との差がさらに大きくなった。

 

主体的に学ぶ力つく/子供の変化実感…パネルディスカッション

 ――先日、滝野川小学校の「NIEタイム」を見学したが、どの学年・クラスも当たり前のように新聞に親しんでいたのが印象的だった。

 水木 今年で教師になって5年目。6年生の担任を務めている。NIEタイムに取り組んで子どもたちも変わったが、私自身も大きく変わった。新聞を読み、テレビのニュースも見るようになり、社会とつながる楽しさを覚えた。

 ――導入するコツは。

 関口 最初は新聞社が提供する、記事に設問をつけたワークシートを利用して始める方法もある。子どもたちが記事をスクラップして感想などを書くのは、難しいことではない。子どもたちが作成したシートにしっかりとコメントを書こうとすると教員の負担は大きくなるが、「Good」の一言でもかまわない。

 ――子どもたちはどんな記事を選ぶか。

 水木 1面の記事に飛びつく子もいれば、一貫してスポーツの記事だけを選ぶ子もいる。NIEタイムを通して、子どもたちの思考が見えてくる。

 ――中学や高校で取り組むにはどうすればいいか。

 関口 小学校と変わらない。生徒たちの主体性を生かしながら、隙間の時間を使って好きな記事を選ばせればいい。興味ある記事をプレゼンテーションして発信するのは、生徒たちにとって魅力ある活動だ。

 ――NIEを実践するうえで苦労したことはあるか。

 水木 タイムリーな記事を見つけるのに苦戦した。一人で探すのは大変だが、他クラスの担任と一緒に新聞を毎日読み、情報を共有して記事を見つけた。仲間の存在が大きかった。

 ――子どもたちはどのように変わったか。

 水木 15分間で新聞を選んで切り抜き、要約と感想を書く活動を初めてさせたとき、時間内で終えることができた子は1人しかいなかった。しかし、1年間続けると21人が提出できるようになった。クラス全員とはいかなかったが、15分間で書ききれる力が着実についた。子どもたちのスクラップノートから、そうした足跡も見えてくる。

 ――具体的なエピソードがあれば教えてほしい。

 水木 体育館で書き初めの会をしたとき、後かたづけをしない子どもたちがいたので、「何をしているのか」と近づくと、下敷きに使った新聞を読んでいた。「なんの記事」とほかの子もどんどん集まってきた。子どもたちの大きな変化を感じた瞬間だった。

 

 関口 ある新聞社から小学生向けの新聞の提供を受け、NIEタイムをやったことがある。3年生の子が私のところへやって来て、「情報が少ない。みんな切り抜いている記事がいっしょだよ」と教えてくれたことがあった。子どもたちは自分だけが見つけた記事を切り抜き、コメントを読んでもらいたいもの。低学年でも、大人の新聞でNIEタイムはできる。

 

 ◇…パネリスト…◇

関口修司・日本新聞協会NIEコーディネーター

水木智香子・東京都北区立滝野川小学校教諭

<司会>秋山純子・読売新聞NIE企画デザイナー

 

週1回切り抜き意見記す

 

 Q 「NIEタイム」って何だろう。

 A 日本新聞協会の関口修司NIEコーディネーターが、東京都北区の小学校長時代に提唱・導入した、子どもたちが新聞に親しむ活動。子どもが主体の継続的な活動で、全校児童が一斉に取り組んだ。

 Q 具体的に、どんなことを。

 A 新聞を読み、記事を選んで切り抜き、ワークシートに貼ってコメントをつけるのが基本。コメントは、記事を選んだ理由や要約、感想や意見などを記す。

 Q 小学校低学年では難しいのでは。

 A 鮮やかな色彩の写真や広告などを含め、各自が興味のある記事を探すことは可能。低学年でも十分取り組める。

 Q 新聞はどう準備すればいいだろう。

 A 家庭で購読している子が古新聞を持ち寄れば、クラス全員にいきわたる。新聞社のNIE担当に連絡を取り、割安な教材価格で購読する方法もある。

 Q どのように導入すればいいの。

 A 教科・領域の年間指導計画には位置づけず、朝学習などの隙間の時間を活用するのがお勧め。短時間でいいので、週に1、2回程度、定期的・継続的に取り組むことが大切だ。

 Q 子どもはどのように変わるのか。

 A 初めは「難しい」「めんどうくさい」と言っていたのが、続けるうちに「楽しい」「やってよかった」と口をそろえるようになる。教師主導ではなく、子ども主導で取り組ませ、無理することなくコツコツと続けるのがポイントだ。

       ◇

 

  静岡市立井宮小学校教諭の中村都さん 「今年4月にNIE実践校に異動したばかりで、学校全体としてどのように取り組めばいいか悩んでいた。講演もパネル討論も、自分の学校でどう生かせるかと、ずっと考えながら聞くことができる内容だった」

 

  千葉大学教育学部4年の鈴木建吾さん 「周りの学生にNIEの良さをわかってもらおうと勧めている。『とにかく一度やってみて』と言うのだが、新聞を読んでいない学生も少なくないので、新聞を目にする機会を増やすことが必要だと思う」